雑誌

編集者は「邪馬台国」をどう断るか

『いける本・いけない本』第7号というミニコミ誌を眺めていたら、タイトルのようなエッセイを見つけた。著者は、元講談社の編集者、鷲尾賢也さんである。編集者をやっていると、様々な持ち込み原稿が殺到するが、そのなかでもいちばん多いのは「邪馬台国」…

ヤン・パトチカという哲学者

『思想』12月号が、チェコの哲学者、ヤン・パトチカの特集を組んでいる。パトチカは、1977年に、チェコの警察による過酷な訊問を受けて、70歳を目前に死んだとのこと。この特集を読むまで、私はこの哲学者についてまったく知らなかった。亡命するこ…

新屋達之「検察・刑事訴追の課題」

今月の「法律時報」に出ている新屋達之の論文が興味深かった。2007年の司法改革を批判的に論じている。新屋さんは、戦後改革以降の刑事手続きの当事者主義化、「検察の民主化」と「訴追の民主化」が未だ達成されていないことを指摘する。2007年の司法改革も…

ミャンマーからの「僕たちは小声で連呼する人間はいらない」という声

ニュースで聞いているだけだが、現在もミャンマーの状況は難しい。「すばる」12月号に土佐桂子「ミャンマーのいま ブログから見えること」というレポートが載っている。ミャンマーでは厳しい情報統制が敷かれている。土佐さんは、1998まで続いたネーウィン政…

長岡善幸「コミック性表現・規制の現在」

今月の『出版ニュース』(10月号)に、松文館のわいせつ裁判に関する。レポートが出ている。事件の発端は以下。 松文館に「わいせつ図画販売」容疑で警視庁保安課と代々木署が家宅捜索に入ったのは、2002年9月19日のことだった。元警察庁キャリアの平沢勝栄…

フェミニスト生命倫理学

Bioethics誌の最新号が、フェミニスト生命倫理学の特集となっている。Bioethics Vol.21, No.9 November 2007なかでも、Angela Thachukの"The Space in Between: Narratives of Silenced and Genetic Terminations" 511-514 が気になる。 Consider the follow…

ヘーゲル『精神現象学』

雑誌『理想』679号が、「ヘーゲル『精神現象学』」という特集を組んでいる。『現代思想』も同じ特集を組んでいたし、やっぱりヘーゲルと言えば、この本でしょうというわけか。冒頭にまたしても加藤尚武の論文がある。「実体−主体説と実体−主語説」。その…

トランスヒューマニズムの生命倫理

Bioethics誌の最新号に、James Wilson, "Transhumanism and Moral Equality," Bioethics 21-8(2007)pp.419-425という論文が掲載されている。「エンハンスメントによってがんがん個人の能力を増強できるようになったら、非常に不正な社会がくる」というフラン…

科学と宗教は対立するのか

日経サイエンス10月号に、大物科学者二人の対談が掲載されているようです。nikkei-bookdirect.com - このウェブサイトは販売用です! -&nbspnikkei-bookdirect リソースおよび情報 原テキスト(Scientific American 2007.7)Should Science Speak to Faith…

介護におけるジェンダーの問題

今朝のテレビ番組*1で、男性介護士の問題が取り上げられていた。途中から見たので、詳しい事情はわからないが、50〜60代の女性が、自分の母親が男性介護士に排泄の介助をされていることを、不満として訴えていた。*2母親は老人介護施設に入居中である。施設…

DAYS JAPAN 9月号

http://www.daysjapan.net/dj/index.html フォトジャーナリスト・広河隆一さんが責任編集を行っている Days Japan 9月号を読んだ。 本号の特集は、イラク「人質」の3年。高遠菜穂子さん、郡山総一郎さん、今井紀明さんが寄稿されており、事件当時の状況を…

サバイバル・ロッタリー擁護論

新着のBioethics誌に、ハリスのサバイバル・ロッタリーの改良案の擁護論が掲載されている。Gerhard Overland, "Survival Lotteries Reconsidered", Bioethics 21:7, pp.355-363, (2007)。オーバーランドは、サバイバル・ロッタリーの概念を、national lotter…

ポストコロニアルって

『現代思想』8月号に、磯前順一「外部とは何か?− 柄谷行人と酒井直樹、そしてクリスチャン・ボルタンスキー」という論文が掲載されている。冒頭から、柄谷の「探求1」の議論が引用されていて、なんか懐かしい。ポストコロニアル研究について、磯前はこう…

オバサンの性的欲望は少年へと向かう

『論座』2007年9月号で、信田さよ子が「ホントはこわい?王子ブーム」というエッセイを書いている。まず、ペ・ヨンジュンファンの一部が、斎藤佑樹(ハンカチ王子)に流れたが、信田自身がその典型だと告白する。まずは斎藤が、安定した愛情溢れる家族…

『思想』1000号記念・続き

『思想』1000号記念特集の座談会「思想の100年をたどる(1)」で、佐藤卓己、苅部直、米谷匡が鼎談している。そのなかで戦前戦中の時期の『思想』や隣接雑誌について語っているところがおもしろい。林達夫は、読み手に「哲学的公衆」が登場し、哲学…

大東亜戦争と「思想」

『思想』8月号は、「思想第1000号記念特集」を組んでいる。総目次がすごい分量だが、これは思想史家にとっては役立つ資料となるだろう。谷川徹三による回想的エッセイ「『思想』の一七年 −昭和四年から昭和二〇年まで」が資料として採録されている。読…

長谷部恭男「日本国民、カモーン!」

「UP」(東京大学出版会)の6月号をぱらぱら読んでいると、テンションの高い題名の文章があったので、読んだ。長谷部さんは、ロンドンのおもちゃ屋で、異様にリアルなヘビのパペットをみつける。 筆者は、東京コミックショウの「レッド・スネイク・カモーン…

『現代思想・総特集ヘーゲル』

今月号の『現代思想』臨時増刊の特集は、ヘーゲルの「精神現象学」である。いろんな人たちが論説を書いている。冒頭の加藤尚武「『精神現象学』というゆがんだ真珠」は、加藤的な割り切りがたいへん面白い文章である。 ヘーゲルという思想家は体質的に未完成…

Ashleyについてのエッセイ

例のAshley treatmentについての生命倫理側からのコメントが、新着のHastings Center Report 32:2(2007):pp.16-20に掲載されています。S.Matthew Liao, Julian Savulescu, and Mark Sheehan, "The Ashley Treatment: Best Interests, Convenience, and Paren…

モーリス・ブランショ「奇異なことと異邦のもの」

今月の『思想』(岩波書店)はブランショ特集。ブランショの「奇異なことと異邦のもの」の邦訳(訳者:上田和彦)が掲載されている。ブランショは「詩の言葉」が「純粋な断言」によって問いかける、という主題を述べている。 問いかける仕方は、ひとつの断言…

男は女と同じくらいおしゃべりだ

7月5日発売の米国雑誌「TIME」に、「男は女と同じくらいおしゃべりだ」という記事が載っている。これはこの週の科学誌「SCIENCE」に掲載された論文を紹介したものだ。それによれば、大学生の男女の服に隠しマイクを付けてもらって、ランダムなタイミン…

誰のための被害者参加制度なのか?

kanjinaiさんも下で紹介しているが、20日に刑訴法の改案が可決され、裁判の「被害者参加制度」が現実化するという方向性が決まった。法学者の白取祐司はフランスの法制度と比較しながら次の点を指摘する。 フランスの刑事裁判は職権主義で裁判長のイニシアチ…

被害者参加制度は重罰化を推進するか?

『インパクション』157号(2007年7月10日号)にて、弁護士の山下幸夫が、「重罰化が進む昨今の法改正について」というコラムを書いている。その中に、今国会で成立(6月20日)した「被害者参加制度」(裁判の時に被害者側も出廷できるという制…

フリーターズフリー

フリーターズフリー〈Vol.01〉よわいのはどっちだ。作者: フリーターズフリー出版社/メーカー: フリーターズフリー発売日: 2007/06/01メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (31件) を見る アマゾンから届いたので、少しづつ読んで…

『フリーターズフリー』創刊

下でfont-daさんも派遣労働問題について触れられているが、雑誌『フリーターズフリー』が、このたび創刊された。 「フリーターズフリー」HP http://www.freetersfree.org/ フリーターズフリー〈Vol.01〉よわいのはどっちだ。作者: フリーターズフリー出版…

ケアリング・エージェントの生命倫理

研究室に新着雑誌がたくさん来ていたので、少し紹介。『Ethics』Vol.117,No.3 April 2007に、Arnieszka Jaworska, "Caring and Full Moral Standing" (pp.460-497)という大論文が載ってます。パーソン論は、ある存在者が正当な道徳的配慮を受けられる「人格…

バージニア工科大学事件と「移民」

『現代思想』2007年6月号に、山本薫子さんの「ディアスポラの子どもたち」が掲載されている。テーマは日本にいるブラジル移民だが、枕として、バージニア工科大学事件の容疑者のことが書かれている。彼は、韓国からの移民だったのだが、その点は、事件…

カント、フィヒテ、ヘーゲル、女

『思想』2007年4月号に、水田珠枝さんによる論文「平塚らいてうの神秘主義(上)」が掲載されている。これは平塚らいてうのフェミニズム思想形成を、当時の思潮や、人間関係、本人の人間形成などの点から解明しようとする意欲作である。この論文を読ん…

月刊オルタ・2007年5月号

「オルタ」は NPO法人・PARC が刊行する雑誌ですが、最新号は貧困の特集です。赤木智弘さんと雨宮処凛さんの対談も掲載されるそうです。 <特集>世界の貧困―日本の貧困日本社会でも「格差」や「貧困」がアジェンダ(検討課題)として確立され、百家争鳴状態…

アメリカ国民の宗教意識

キリスト教世界の暦では、来週日曜日が復活祭にあたります。Newsweek(2007年3月31日付)に、アメリカ国民の宗教意識に関する調査結果が出ていましたので、紹介します。NEWSWEEK Poll: 90% Believe in God http://www.msnbc.msn.com/id/17879317/site…