サバイバル・ロッタリー擁護論

新着のBioethics誌に、ハリスのサバイバル・ロッタリーの改良案の擁護論が掲載されている。Gerhard Overland, "Survival Lotteries Reconsidered", Bioethics 21:7, pp.355-363, (2007)。オーバーランドは、サバイバル・ロッタリーの概念を、national lotteryとgroup specific lotteryとlocal lotteryの3種類に分類する。そのうえで、local lottery は擁護できると結論する。

では、local lotteryとは何かというと、世界中の病院には、臓器移植をしないともう死んでしまう人間がたくさんいるが、それらの人々は、ある人は心臓がほしいと思っているし、ある人は肝臓がほしいと思っているし、ある人は腎臓がほしいと思っているだろう。このときに、ランダムに誰か一人を殺して、その人から使える臓器を全部取り出していろんな人に移植すればいいということなのだが、ここでのポイントは、<もしそういうロッタリー(くじ)をしなければ>全員死んでしまうということ、そして、彼らはそのロッタリーに世界中から自発的に参加しているということである(後者に関しては種々議論されている)。

まさに生存宝くじである。なにもしないのなら全員死んでしまうのだから、なにかしたほうがいいでしょう?というわけである。そのときにフェアネスを確保するために、くじ引きにする。健康な人や、イヤな人は参加しなければいい。参加者を増やすためには、情報ネットワークを駆使して、世界規模でやるのがよい。と、著者は主張している。著者は(たぶん)指摘してないが、この議論のキモは、こういう設定にしたときに、それは現行の脳死身体からの臓器移植ネットワークに、限りなく近づいたものに見えるという点である。

Bioethics誌、今号の、巻頭論文である。