戦後民衆精神史

現代思想2007年12月臨時増刊号 総特集=戦後民衆精神史

現代思想2007年12月臨時増刊号 総特集=戦後民衆精神史

現代思想』臨時増刊号が、「戦後民衆精神史」という特集をやっている。戦後の思想文化芸術運動をささえた、サークルの動きを検証していて面白い特集になっていると思う。資料としても貴重なのではないだろうか。冒頭に、鶴見俊輔吉本隆明金時鐘へのインタビューが掲載されている。

鶴見は例によって、歯に衣着せぬストレートな物言いで、たいへん面白い。こういう知性をもって高齢化するというのはうらやましいと思う。

日本の社会は創造的な力を消していくね。これは大学の影響じゃないかと思うんだよ。日本の文化というのは大学出の人たちが作ったものじゃあない。・・・(中略)・・・断じて日本は終わる。私はもともと親父と爺さんを比較していてその直感はあったんだ。80年経って確認するね。自分の中の目利きによると、未来はない。(17頁)

これは、創造的な面という意味では、日本に未来はないということだろう。日本全体を主体として見ると、日本全体が世界に冠たる創造的な場所になるという機運は、たしかになさそうに私も思う。ただそのなかの個人に注目すれば、創造的な個人はこれからも出てきて、その人たちは日本という場所にこだわらずに個として創造性を発信していくだろう。後の世界史から見れば、それらの個人は、とくに日本人としては見られないだろう。私はこのように未来を見ている。