2007年の3冊

続いて私の場合(必ずしもお勧め本ばかりではありませんので注意)。

(1)樫村愛子ネオリベラリズム精神分析

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)

ネオリベラリズムの精神分析―なぜ伝統や文化が求められるのか (光文社新書)

今年出たネオリベ批評系の本としては、秀逸だと感じた。もっとも、タイトルから連想されるような「現代社会分析」はうしろのほうに少しあるだけなのだが、ギデンズ理論への批判、ジジェク精神分析を応用した日本社会の分析を試みた著書。ネオリベラリズム/貧困といった括りでは、ほかに岩田正美『現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書)』、本田由紀編『若者の労働と生活世界―彼らはどんな現実を生きているか』が印象に残った。

(2)中島みち『「尊厳死」に尊厳はあるか』

「尊厳死」に尊厳はあるか―ある呼吸器外し事件から (岩波新書)

「尊厳死」に尊厳はあるか―ある呼吸器外し事件から (岩波新書)

2006年3月に起きた、射水市民病院での呼吸器取り外し事件の詳細なルポルタージュ尊厳死法制化を望む声に対し、もうすこし慎重に考えるための事実を知ることができる本。ほかに「病/障害」系では、星加良司『障害とは何か―ディスアビリティの社会理論に向けて』、香西豊子『流通する「人体」―献体・献血・臓器提供の歴史』、井出草平ひきこもりの社会学 (SEKAISHISO SEMINAR)*1などが――必ずしも同意できるところばかりではないにせよ――面白かった。

(3)美馬達哉『〈病〉のスペクタクル――生権力の政治学

「病」のスペクタクル―生権力の政治学

「病」のスペクタクル―生権力の政治学

「理論書」といってもいいのだろうか。このジャンルの本をたくさん読んだ(読まざるを得なかった)が、いちばんよかったのがこの本。美馬さんは、医者でもあり、人文社会科学に関しても精通している方。〈病〉の事象を羅列しながら、思想的な分析を加える。ほんとうは、美馬さんもテーマをもうすこし掘り下げたかったのだと思うが、それは今後の仕事か。ほかにこのジャンルでは、大越愛子・井桁碧編『脱暴力のマトリックス (戦後・暴力・ジェンダー)』、ドゥルシラ・コーネル『限界の哲学』、品川哲彦『正義と境を接するもの: 責任という原理とケアの倫理』、ピーター・シンガー人命の脱神聖化』、安藤馨『統治と功利』などをよく読んだ。

(番外――復刊本)和辻哲郎倫理学

倫理学〈1〉 (岩波文庫)

倫理学〈1〉 (岩波文庫)

岩波文庫から和辻の『倫理学』が4分冊で復刊したのも今年。私は和辻倫理学を日本ナショナリズムのある意味典型だと思っているが、それも本書を読むところからしか始まらない。『人間の学としての倫理学 (岩波文庫)』も文庫復刊。その和辻批判をも含む(『人間の学としての倫理学』文庫版解説者でもある)子安宣邦日本ナショナリズムの解読』――これは新刊――も印象深い。

*1:この3冊はいずれも修士論文や博士論文である。