アドルノの否定弁証法講義

否定弁証法講義

否定弁証法講義

アドルノの大著『否定弁証法』への入門的位置づけにあたる本。アドルノが1965年から66年にかけてフランクフルト大学で行なった連続講義のテープ起こしを本にしたもの。

アドルノは「肯定的批判」に対して次のように言う。

そのとき私はラインラントのあるホテルに滞在していたのですが、そのホテルの支配人に私はこう言ったのです。他の点では申し分のないホテルなのに、こんなに騒音がひどいのだから、二重窓を設置すべきではありませんか、と。すると彼は、当然のことながらいくつかの込み入った事情でそれは不可能なのだと説明したあとで、こう語ったのです。「しかしながら、私どもはもちろん、肯定的な批判に対してはいつも心から感謝申し上げています」。
 私が否定弁証法について語る場合、まさしく肯定的なもののこの物神化に対してあたうかぎり明確に一線を画することが重要な動機となっています。(36頁)

興味深い文章である。ここからどういうふうに展開されていくのかは、先を読んでみないと分からない。私自身は、ホルクハイマーのほうが分かりやすくて好きなのだが、アドルノもちゃんと読まないといけないなあと思っている。