バンコク児童買春の闇

子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間

子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間

これは、タイの少女・少年売春の地獄のような実態を描いたものである。著者は、白人の女性ソーシャルワーカー。原著出版は93年だが、おそらく事態は今日でもまったく変わっていないだろう。著者は、支援者の男とカップルを装って、売春宿に行って調査をする。ホテルの部屋に売春婦としてやってきた少女は、8歳である。

トイがタイ語でやさしく尋ねる。ついさっき会った大人はどんな人なの。どこで。その人はどんな格好の人だったの。どんなことをさせようとしたの、ソンタ(少女)が話す。3時間ばかり前、147号室。背の高い、白人の男がベッドに横になって待っていた。ソンタがシャワーを浴びるのを、待ち遠しくてならないといった感じで、じっと見ていた。ウィスキー一瓶とグラス2個が、部屋に一つだけあるテーブルにのっていた。部屋はたばことアルコールの臭いがしていた。ソンタはベッドに横になった。男の90キログラムのからだがソンタにのしかかった。(22〜23頁)

著者は、ソンタを返すことができず、ルールをやぶって、ソンタを買い取ろうとする。宿屋の女主人と交渉して、800ドル(10万円くらいか)でソンタを買い取る。そしてソンタが誘拐されてきた村に連れて行き、家族と再会させる。しかしそんなことで問題が解決するわけではないことは誰よりもよく知っている。著者は、ギャングから脅迫され、部屋に臓物を届けられたりする。

80年代のヨーロッパの旅行会社のパンフレットにはこのように書かれている。

毎晩6人の小さな奴隷のなかから一人をお選びください。夜12時には、ガイドが参加者のためにくじで女の子を引きます。運のいい方は可愛い子猫ちゃん二人とベッドをともにできます。・・・「12歳でタイの少女は父親に強姦され、次いで母親からあらゆる体位について手ほどきを受ける」。(246頁)

欧米とは文化が違うのだから、心配しなくて良い、という伏線が張られる。著者は現地で買春するフランス人にもインタビューしている。

「ここでは、子どもはかなり幼いころから性的に成熟する。8歳、いや10歳かな。そこでからだを提供する。つまり、売春する。彼らには経済的な価値があるからね。でもそれだけじゃない。大人は子どもを痛がらせずに肉体的に愛することができるんだ。・・・(中略)・・・おわかりですよね、それが、新しき愛なんです。・・・(中略)・・・父親との間に性的関係を見いだすことよりも、小さな女の子や男の子にとって、もっと安心感を与えるものって何だと思います?それを引き受けるものこそ外国人だという考え方のほうが当然だと思いませんか。(87頁)

買春する外国人の年齢は20歳から70歳。売られる子どもたちは売春宿に閉じこめられ、逆らうと殴られたりナイフで虐待される。からだは傷とアザだらけである。ショーウィンドウに並べられて、客の指名を待つ。

本書の内容は引用したものよりもさらに衝撃的である。描写には、著者の憶測や脚色が入っているが、その裏側に透けて見える事実を否定することは不可能だろう。

先日、BBC国際放送で、タイの少女売春についての侵入レポートをやっていたが、ほんとうに、小学生くらいの少女たちが売られていた。警察とはイタチごっこが続けられているらしい(というかひょっとしたら警察との癒着があるんじゃないだろうか)。被害児童の写真は見るのがつらいし、客の写真は醜い。