クレームメーキング
ブログで情報発信していたところ、国会議員から問い合わせがあり、実際に国会質問の参考資料に使われた、という報告がある。
先日、参議院議員である松浦大悟さん(松浦大悟 - Wikipedia)から問い合わせのメールをいただきました。今国会で争点として取り上げられそうな「学校裏サイト」「出会い系サイト」「有害サイト規制」について質問するため、これらに関する情報を提供して欲しいとのことだったので、下記のようにお答えさせていただきました
chiki「松浦大悟議員が『有害サイト規制』『学校裏サイト』などについて質問」『荻上式』http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20071119/p1
ネットで、各人が情報発信をできるようになって数年経過したが、実際に国会質問に直結するような協力関係ができたのは初めてのケースかもしれない。もちろん、書き手のchikiさんは、先日「ウェブ炎上」を出版されたところだから、という背景もあるだろうが。
ところで、以下のような問題について。
出会い系サイト規制の前提として、「出会い系サイトを利用した児童買春事件が急増している」というクローズアップがよくされているが、これだけをみて論じるのは間違い。まず統計的に見ても売春が「急増」しているわけではない。ネット・ケータイユーザーが単純に増加したことで、ネット・ケータイを通じてこれまで行われていたことが<可視化>されるようになったこと、およびこれまでであってもコミットしやすかった層が、ネットに流れているということなども関係していると予測される。単純に増えたわけではない。
(同上)
このような主張は社会学でよく見られる。たとえば、「児童虐待は増加していない」という研究がなされ、一部の社会学者の中で議論になっているようだ。ショッキングで、感情的な反応を呼びやすい主張が、社会の人々の不安を煽り、センセーショナルに取り上げられることを「モラルパニック」と呼ぶ。社会学者は、このモラルパニックに陥った人びとを分析し、主張を始めた人物を探し出し、どのような過程で社会に受け入れられていったのかを調査する。そうして、実は、その主張の論拠が曖昧で非科学的だということを、発見したりする。
それは、それで大事である。私もそういう研究を好んで読むほうである。また、現在、ニュースで取りざたされているいくつかの、ショッキングな主張*1の研究が、早急に必要だとも思っている。
ただ、クレームメーキングが必要ないか、というと、そんなことはない。「出会い系サイトを利用した児童買春事件」も「児童虐待」も急増していなくても、あることはある、のだ。そして、可視化された以上、なんらかの対策は必要になってくるだろう。モラルパニックが起きたからこそ、やっと日の目を浴びた、としかいいようのない問題がある。そういう混乱期を通過しないと、社会は真面目に取り組まない、という側面だ。
マッチポンプでないやり方で、問題を問題化する方法というのが、今の私には思いつかない。やはり、焚き火みたいにボーボー燃えている人もいれば、焼却炉みたいに静かに燃えている人もいるほうが良いと思う。もちろん、誰が炎上して、誰が焼け焦げているか、ということも、問題にしなければならないけれど。とりあえず、燃えている人は、燃える以外に方法がないほど、追い詰められていた可能性がある、ということは、念頭において議論したほうがいい。燃えてるのが、その問題の当事者であってもなくても。
まだ、上手くかけないが、クレームメーカーになることを、やたら恐れる風潮が、今の私の世代の人に多いように感じて、それを危惧している。問題を問題化することは、わがままや責任放棄だとみなしやすいのではないか。気になっている。