諸富祥彦『ずっと彼女がいないあなたへ』

モテ論を継続して読んでいる。諸富のこの本も読んでみた。

ずっと彼女がいないあなたへ

ずっと彼女がいないあなたへ

著者は臨床心理学専攻。私よりも若い方だが、私と似たようなフィールドで著作活動を活発にしている。男の先輩として、若い男に語りかけるというスタイルは、私と共通している(オッサン力?)し、力説するツボも、まあ似ているとは言える。たとえば、次の箇所。

仕事に命がけで取り組んでいる男性が、この一瞬は「私だけのもの」となる。私のことを「世界で一番大切」と言ってくれる――このギャップに女性はクラッとくるのです。「仕事にひたむきに打ち込む姿」と「女性に"私は大切にされている"と思わせる、マメな努力の積み重ね」。どうやらこの二つが、女性の心をつかむための最大のポイントのようです。(231〜232頁)

前のエントリーでも言ったが、これは大枠では正しいし、またこういうことはある程度人生を生きているうちになんとなく分かってくる事柄である。なので、こういうことを、若者に向かって情報提供することに意味はあると私も思う。

と同時にこの手の本を読んでいて思うのは、これは書き手の女性観というか男性観というかジェンダー観というか、そういうものをにじみ出させてしまうのだなあ、ということだ。たとえば次のような箇所。

自分の胸の内を明かして、相手に気持ちを伝える。これは、男にとってもっとも勇気を必要とする行為です。
 本気で惚れた相手に出会えたら、とくかく口説け!
 口説いて口説いて口説きまくれ!!
 これが男というものです。(192頁)

言いたいことはわかる。このくらい若者を挑発(勇気づけ?)したい気持ちもわかる。しかし、最後の1行は、いただけない。この一行を言うのは、踏みとどまるべきではなかったか。諸富さんは、この一行で、渡辺淳一センセイと同じことになってしまったのではないのか。

自戒をこめて、そう言っておきたい。