アメリカ国民の宗教意識

 キリスト教世界の暦では、来週日曜日が復活祭にあたります。Newsweek(2007年3月31日付)に、アメリカ国民の宗教意識に関する調査結果が出ていましたので、紹介します。

NEWSWEEK Poll: 90% Believe in God
http://www.msnbc.msn.com/id/17879317/site/newsweek/
http://www.msnbc.msn.com/id/17875540/site/newsweek/ (12.以降を参照)

「90%が神を信じる」

 内容を要約すると、

アメリカの成人の10人に9人(約91%)が神を信じ、そのほとんど(87%)が、特定の宗教に属している。キリスト教徒が82%。その他の宗教の信者は5%(ユダヤ教イスラム教等)。

・48%が科学的進化論を否定。大卒者の約3分の1(34%)が、聖書の創造の記事(=神は天地万物を6日間で創造し、7日目に安息したという「創世記」冒頭の記事)を「事実」と考える。福音派プロテスタントの73%、非福音派プロテスタントの39%、ローマ・カトリックの41%が、神は最近一万年の間に人間を創造したと信じている。

 → 大卒者に進化論を否定する人が結構いる点が、注目でしょうか。

・10%が「宗教なし」、6%が「神を全く信じない」と回答。3%が「無神論者」を名乗っている。過去の統計と比べると、信じる多数派が信じない少数派に寛容になった傾向がうかがえる。ただし、登録有権者の約6割は、自分は無神論者だと公言する候補には投票しないと回答。

 → 先月ですが、スターク議員が米国史で初めて「神を信じていない」と公言したことがニュースになっています。

http://www.usfl.com/Daily/News/07/03/0316_015.asp

アメリカ政治に、既存の宗教の影響力が近年強くなったと考える者は、36%。

 参考。アメリカ国民の宗教意識について、研究文献は多くあると思いますが、とりあえず二冊ほど紹介しておきます。

Evolution Vs. Creationism: An Introduction

Evolution Vs. Creationism: An Introduction

宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)

宗教からよむ「アメリカ」 (講談社選書メチエ)

雨宮処凛さんの新著

生きさせろ! 難民化する若者たち

生きさせろ! 難民化する若者たち

読みました。フリーターや野宿者問題、心の病、そして過労死というきわめて現代的なルポをもとにした雨宮さんの主張は、以下に凝縮されている。

闘いのテーマは、ただたんに「生存」である。生きさせろ、ということである。生きていけるだけの金をよこせ。メシを食わせろ。人を馬鹿にした働かせ方をするな。俺は人間だ。(p.10)

生命倫理学では、「生命の神聖性」(Sanctity of Life)と「生命の質」(Quality of Life)という先鋭的な対立があるとされる。しかし、雨宮さんが「生きさせろ!」という可能性に賭けて声を大にするとき、もちろん「ただ生きているだけを達成させること」を主張しているのではない。「人を馬鹿にした働かせ方をするな」と言うぐらいだから、「当たり前に認められてよい」*1レベルの個人の生を社会は無条件に肯定せよ!ということなのか。だとすれば、SOLとQOLは対立しない、むしろ個人のQOL(「生活」の質)を社会が高めるという視点で、SOLと両立し得るのではないか、そんなふうに感じた。
雨宮さんのブログ「すごい生き方」
http://www.sanctuarybooks.jp/sugoi/blog/
<参考>

生命の神聖性説批判

生命の神聖性説批判

不平等の再検討―潜在能力と自由

不平等の再検討―潜在能力と自由

*1:私自身はと言えば、アマルティア・センの言う「基本的ケイパビリティ」の水準を想定しているが、これは当然に議論があってよいところ。