加害者の家族・被害者の家族
死刑に関する本が紹介されているので、私は次を挙げておく。
- 作者: 坂上香
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/01/26
- メディア: 単行本
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注目される機会も増えているので、ご存知の方も多いかもしれない。
坂上さんが取材しているのは、アメリカの死刑囚の家族と、犯罪被害者が、同じバスに乗って死刑廃止運動をする、という団体である。詳しい内容は、ぜひ読んでいただきたいが、必ずしも上手くいっていることばかり書かれているわけではない。また、この取り組みを美化して、犯罪被害者の家族に、これを理想像として押し付けてはならない。その上で、ときに、「被害者の気持ちを考えろ」「遺族の気持ちを考えろ」と言いたい気持ちに駆られる、第三者の私たちは読むべき本である。
犯罪被害者の家族が、「加害者を殺してくれ」という気持ちは、素朴に私たちに理解しやすい感情かもしれない。「私も、そう思うんじゃないなろうか」と想像できそうだ。しかし、直接の加害者ではないとはいえ、死刑に値する犯罪をおかした加害者の家族と、抱き合って気持ちをわかちあい、共に死刑廃止運動を推進していく犯罪被害者の家族の気持ちは、想像しにくい。
さまざまな犯罪被害者の家族がいるだろう。「あなたなんて本当の犯罪被害者の家族ではない!」と言いたくなる家族もいるかもしれない。「こんな犯罪被害者の家族は、レアケースだから除外すべきだ」と言いたくなる家族もいるかもしれない。でも、丁寧に追っていったほうが良い。その中で、私たちは、自分が犯罪被害者の家族に、あって欲しい理想像を押し付けている自分を発見するかもしれない。
せいぜい、私たちにわかるのは、犯罪被害者の家族というのは、驚くほど多様でひとくくりにはできない、ということだろう。しかし、それでも私たちは、犯罪被害者の家族について、論じていくことになるだろう。それは、「犯罪被害者の家族として」、ではなく、「社会を運営する一員の一人として」*1第三者が死刑や司法制度について考えるときに、念頭においておくべき問題である。どんなにインタビューや、書籍を読もうとも、私たちは犯罪被害者の家族(当事者)にはなれないし、なる必要もない。そして、当事者の気持ちを代弁することもできない。まず、そこからだろう。
坂上さんは「ライファーズ」という映画もとっている。こちらは修復的司法の要素を取り入れた、アメリカの刑務所内でのプログラムなどを紹介した作品である。DVDが出ていないようで、残念だ。こちらも賛否両論だが、もう少し広く知られて良いように思う。
*1:簡潔に言えば「市民として」ということである。