『世界の貧困問題をいかに解決できるか』

世界の貧困問題をいかに解決できるか―「ホワイトバンド」の取り組みを事例として 千葉大学講義録

世界の貧困問題をいかに解決できるか―「ホワイトバンド」の取り組みを事例として 千葉大学講義録

千葉大学と「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンとホワイトバンドプロジェクトが合同で行なった千葉大学の教養部の講義を、テープ起こししたもの。もうみなさんはホワイトバンドのことはすっかり忘れているかもしれませんね。それをめぐって日本では一悶着あったことも。

この講義録で言われている内容は、とても正しいように思われる。善意と正義に満ちている。と同時に思うのは、こういうメッセージは、こういう運動を「ケッ」とか思っていらいらする人々には、なかなか届かないということかな。「それでもいい、正しいこと、必要なことは続けていくのだ」という態度それ自体に、いらいらする人はけっこういると思う。

最後に大黒摩季のライブがあって、大拍手で終わっている。

この講義を受けたからと言って、学生の行動が大きく変わるわけではないし、世界が変わるわけでもないだろう。ただ、行動が変わってしまう学生がひとりふたり出るかもしれない。10年後にふと影響が現われる学生がいるかもしれない。それらの学生たちが日々の暮らしや社会の活動のなかで、世界全体の構造をちょっとでも変えるために、これから長い時間をかけて何をすることができるかが問われているのだろう。と同時に、この講義を受けても、現状は現状でいいし、それについて偉そうな指図は受けたくないと思う学生も多くいるだろう。めんどうだから考えたくないし、身近な幸せがいちばん大事という学生もいるだろう。ホワイトバンドとか言って目立ってるセレブたち(巨額の募金をしてもそれ自体が宣伝になってまたもうけを得るだろう人たち)への反感もあるだろう。世界の貧困をなくすことよりも、世界の貧困をなくすことについての言説配置や闘争のほうに関心のある人たちもいるだろう。ブックマークを付けることしか関心のない者もいるだろう。錯綜する状況のなかで、とりあえず私はこの善意と正義に満ちた怪しげな動きに、冷めたYESを送りたい。