ゲーテ『ファウスト』おまえは生きなければならない!

ファウスト (1967年) (角川文庫)

ファウスト (1967年) (角川文庫)

ゲーテの悪口を前のエントリーで書いた。だが、超セクハラオヤジのゲーテであるが、『ファウスト』はやっぱりすごい。第1部の終わりのところを、高橋健二訳で見てみよう。

ファウスト ああ、わたしは生まれて来なければよかったのに!

メフィスト 出かけるんです! でないと、あなたがたはおしまいです。
 何を無益にためらってるんです! ぐずぐずしゃべってなんかいて!
 馬が身ぶるいしていますよ。
 朝が明るくなって来ますよ。

マルガレーテ 何が地面からわいて来たの?
 あの人だわ、あの人だわ! あの人を追い払って!
 このありがたい場所にあの人なんの用があるんでしょう?
 あの人はわたしをつかまえるんだわ!

ファウスト おまえは生きなければならない!

マルガレーテ 神さまのお裁きを! 私は神さまにお任せしました! 

(264〜265頁)

 大時代的で、古典的であり、生命学的である。
 ゲーテが『ファウスト』第1部を書き始めたのは20代のころで、発表したのが59歳。その後、第2部を書き始め、82歳のときに第2部を完成し、みずから封印。半年後、83歳で死去。第2部は死後発表である。もし第2部が書かれなかったら、『ファウスト』はここまで重要な作品にはならなかったであろう。

もちろんフェミニズムの視点から見れば、「ぜんぜんダメ!」の本であることに間違いはない。