福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

久しぶりに自然科学系の本を読んだ。これはおもしろかった。
ワトソンとクリックは約50年前、「DNAの二重らせん構造」を突き止めた。それは「生命とは自己複製をするもの」という定義につながってきた。現代の人文科学・社会科学にも「オートポイエーシス」という概念を定着させた。
その上で福岡さんは、生命の新たな定義を試みようとする。それは「生命とは動的平衡にある流れである」(p.167)というものである。つまり、DNAの構造=秩序は、それが守られるためにこそ壊されている、と福岡さんは述べるのである。そして、その秘密は、タンパク質にあるらしい。
生を学際的に考えるうえでは、必然的に自然科学的な知識や分析方法も学ばなければならない。必要以上に敬することはないが、人文科学・社会科学がともすれば陥りがちな自然科学嫌悪もまた、コトの本質を見失う要因になり得る。
この本の冒頭では、ウイルスの分別の実験を通して、「どんな実験をすれば何がわかるか」に関する科学的分析方法も紹介されている。そこは生物科学における科学論入門としても読めるであろう。