2007年の3冊

G★RDIASでも、2007年の3冊というエントリーをやってみることになりました(3冊でなくてもOK)。

(1)加藤秀一『〈個〉からはじめる生命論』

〈個〉からはじめる生命論 (NHKブックス)

〈個〉からはじめる生命論 (NHKブックス)

荒削りだが、非常に刺激的な本だった。生命倫理に、社会学と哲学から迫るという本。ここで問われているいくつかの問いは、きちんと応答しなくてはならないだろう。こういう仕事をきっかけにして、重要な哲学的な議論が生成していくはずだと思う。加藤さんは生命論からは距離を取るが、私は生命論の中心部から応答したいと思う。

(2)シービンガー『植物と帝国』

植物と帝国―抹殺された中絶薬とジェンダー

植物と帝国―抹殺された中絶薬とジェンダー

科学史の面目躍如といった感じの重厚な研究書。哲学書とは言えないだろうが、こういう作業にも引かれる私がいる。私自身はこういう仕事はけっしてできないがゆえに、あこがれるのかもしれない。単に「××の誕生」みたいなフーコー科学史をやる人がたくさんいるが、シービンガーのこの本はそういうスタンスから自由であるように見える。

(3)木村俊一『無限のスーパーレッスン』

無限のスーパーレッスン

無限のスーパーレッスン

数学の啓蒙書としては最高水準の本だと思う。「無限の操作」を有限時間で完了できるというパラダイムに乗ったときに、どのような不思議な光景が現出するのかを、見事に説明できている。私としては、数学の好きな高校生にぜひ読んでほしいと思った。人間の心と権力のどろどろの部分の研究をしていると、こういう世界の清涼感はほんとにうらやましいとか思うなあ。

(番外)大澤真幸ナショナリズムの由来』

ナショナリズムの由来

ナショナリズムの由来

ごめんなさい。まだちゃんと読めていません。けど、この本、これからの各賞をゲットするのではないだろうか。人文社会の今年の最大の話題作でしょう。