「性同一性障害 × 患者の権利――現代医療の責任の範域」
12月8日に、立命館大学で、性同一性障害と医療の問題に関するシンポジウムが開かれます。基調講演の講師である田中玲さんの著作は読みました。トランスジェンダーであることを理由*1に、病院に受け入れ拒否をされた経験を綴られています。
また、現在、裁判を進行中のヨシノユギさん*2もパネラーで出ています。ヨシノさんは、性同一性障害と認定され、大阪医大で乳房切除手術を受けました。しかし、手術が失敗し患部が壊死しました。その後の、医療関係者の対応も含めて、性同一性障害をめぐる医療を問題化するため、医療過誤裁判として提訴しました。ヨシノさん自身は、こう書きます。
「大阪医大に対して、一連の対応についての質問状を提出したところ、一ヶ月後に『過失は一切ない』という回答が返ってきました。また、その後の診察では、形成主治医から『この回答を出すことで決別するかもしれないと考えた』という言葉を聞きました。大阪医大は、わたしという患者を見捨てても良いと判断したのでしょう。一体GID医療は誰のためのものなのでしょうか。真実を知るために、満身創痍の患者が更に戦わなくてはいけないことにも強い憤りと理不尽さを感じています。
わたしは医療の礎として『犠牲』になりたくはありません。希望を抱いて手術を受けた患者が、逆に絶望に追い込まれるということも、二度とあってはならないと考えています。
ひとりの人間の尊厳すら守られないこの状況を、決して許容しないと示すためにも、私はこの闘いをやり遂げたいと思います。どうか皆様のご支援とご協力をよろしくお願い致します。」
(http://www.geocities.jp/suku_domo/yoshino/yoshino.htm)
この裁判には、当事者も含めて、さまざまな意見が飛び交っています。注目すべき裁判だと、私も考えています。
「性同一性障害 × 患者の権利――現代医療の責任の範域」
日時 2007年12月8日(土)
開場 13:00〜 (14:00開始)
場所 立命館大学衣笠キャンパス
存心館703号(法廷教室)
*参加費無料
◆ 第一部/基調講演
「医療被害と裁判」 勝村 久司 氏
(医療情報の公開・開示を求める市民の会)
勝村さんホームページ:http://homepage1.nifty.com/hkr/
◆ 第二部/パネルディスカッション
「医療の責任とは何か」
勝村氏×田中氏×上瀧浩子氏(弁護士)×ヨシノユギ(原
告)
◇ 主催 「性同一性障害×患者の権利」シンポジウム実行委
員会◇ 共催 立命館大学グローバルCOEプログラム「生存学」
HP:http://www.arsvi.com/
ヨシノ支援プロジェクト
HP:http://www.geocities.jp/suku_domo/□ 地図(アクセスマップ+キャンパスマップ)
http://www.ritsumei.jp/accessmap/accessmap_kinugasa_j.html
http://www.ritsumei.jp/campusmap/index_j.html#KINUGASA□ お問い合わせ
e-mail:sukudomo@yahoo.co.jp
■ 開催趣旨
このシンポジウムは、性同一性障害医療における患者の人権
に関して、私たちの思考と技術を鍛える場である。なぜ、患者
が不満を述べてはいけないというのか。もちろん、患者は怒っ
てもよいはずである。しかし、患者の怒りは巧く伝わ
らない。誰が、なぜ、患者の話を聞かないのか。そこには、ど
のような構造があるのか。2007年春、立命館大学院生のヨシノユギが原告となり、性同
一性障害医療過誤裁判を提訴した。自らのニーズを語る患者に
対して、医師の過酷な労働環境が述べられ、裁判戦術が医師を
マイノリティ医療の領域から撤退させると言われる。
性同一性障害というマイノリティ医療には構造的な問題がある
。だとしたら、この医療の患者たちはその訴えの中で、何を届
けているのか。医療過誤裁判×患者の権利×性同一性障害医療
が交わる場所で、上述の裁判の原告及び弁護人、さらに医療過
誤訴訟と性同一性障害医療の各識者を招いて、議論を
深めていきたい。
■ 講演者紹介
◇ 勝村久司(カツムラヒサシ)氏
大阪府立高校・理科教員1990年、長女(星子[せいこ])を出産時
の陣痛促進剤による被害で亡くし、以降、医療裁判や市民運動
に取り組む。「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話
人、「陣痛促進剤による被害を考える会」世話人、「全国薬害
被害者団体連絡協議会」副代表世話人などを務める。著書に、
『ぼくの「星の王子さま」へ〜医療裁判10年の記録〜』(幻冬
舎文庫、2004)『レセプト開示で不正医療を見破ろう!』(小
学館文庫、2002)『患者と医療者のためのカルテ開示Q&A』
(岩波ブックレット、2002)
◇ 田中玲(タナカレイ)氏
フリーランス・ライター、自由診療でトランスしているFTMTX
ジェンダークィア。正規ルートで診療するつもりはなく、戸籍
を変えるつもりもない。何よりも個人への保障を充実させ、支
配的な戸籍制度が廃止となることを望んでいる。現在、QWRC(
クィア&ウーマンズ・リソース・センター)運営スタッフ、
FTMの自助グループ・T-junction創設、性は人権ネットワーク・
Esto Organization役員。4年前、元恋人のドメスティック・バ
イオレンスで頭を殴られ続けた事が原因で旅先でクモ膜下出血
と脳梗塞、水痘症で倒れる。大阪市内に転院したいと友だちが
電話をかけてくれた所、トランスジェンダーである事を理由に
多数の病院に受け入れ拒否された。その体験を元に著書『トラ
ンスジェンダー・フェミニズム』(インパクト出版会、2006)
を出版。
◇ 上瀧浩子(コウタキヒロコ)氏
弁護士、生活に密着した事件を、依頼者に寄り添った解決をめ
ざしている。2005年司法修習修了、弁護士登録。けやき法律事
務所入所。本裁判の担当弁護士。
◇ ヨシノユギ
立命館大学院生、2002年よりジェンダー・セクシュアリティに
まつわる学生運動に携わり、生と性をテーマとした学習会・講
演会活動、パレード等を開催する。2006年、「性同一性障害(GID
)」治療の一環として、大阪医科大学付属病院にて乳房切除手
術を受けるが失敗、患部の壊死が起こる。2007年3月、医療ミ
スの真相究明と、GID医療の前進を目指して大阪医科大を提訴
、係争中である。性別二元論およびジェンダー批判の観点から
、「GID」や「女性/男性」のカテゴリーに所属しないことを
望み、逸脱を実践する活動家。