ほんまもんのまんこ

 以前、私が書いた女性器切除についての記事へ、x0000000000さんが切除は「先進国云々じゃなくて、単に『痛いから、いやだ!』というのは、どうなんでしょうね。私だったら、身体への侵襲は、単に痛いから嫌ですけどね…。」というコメントをくださっていて、ずっと考えていた。
 というのは、会陰切開を瞬時に連想してしまったからである。多くの産婦人科では、出産時に麻酔なしで会陰をバチンと切るという。*1私(ヘテロ生殖器付き女子)にとっては、もう想像しただけで、「絶対、子どもなんて産みたくない」とびびってしまうのに十分な衝撃。陣痛がものすごく痛いから、切るときは痛みを感じる余裕もないなんて言われても、「とにかく子どもを産むっていうのは、痛いことなんでしょう?!」と恐ろしくなるばかりだ。そもそも、私の体で、別の生き物が育って、会陰を裂いて出て行くなんて、すさまじい「身体への身襲」ではないか。
 けれど、出産は祝福され、女性器切除は忌むべきだというのは、わかるのだけれど、わからない。違うことはわかります。ただ「痛いから、いやだ!」と言って良いなら、やっぱり会陰切開でも私は「いやだ!」と言いたい。
 しかし、出産について、「痛いから、いやだ!」というと、生命の神秘とかそういうのがわからない、無感動な人だと思われるんじゃないかなどと、小心者なところが邪魔して書けなかった。*2「誕生の瞬間」の輝きよりも、まんこの痛みが気になるのは、すごい狭量な気がして。そもそも、「命をはぐくむこと」に比べたら、私のまんこなんて、どうぞ血まみれになってくださいというか・・・と、どんどん卑屈な気持ちに。*3
 以前に個人ブログでも取り上げた、イヴ・エンスラー『ヴァギナ・モノローグ』のラストシーンは出産についての語りで締めくくられる。

わたしが見つめていると、ふいに彼女のヴァギナが/大きな、赤い、脈打つ心臓(ハート)に変わった。/心(ハート)はどんな犠牲もいとわない。/そしてヴァギナも。/心(ハート)は赦し、そして癒す。/自由に形を変えて人を受け入れ/みずからを拡げて人を押し出す。/そしてヴァギナも。/人のために痛み、人のために形を変え、人のために死に、/血を流し、流した血の力で人を送り出す。この困難で驚きに満ちた、すばらしい世界に。/そしてヴァギナも。/わたしはその部屋にいた。/わたしは、忘れない(117〜118頁)

ヴァギナ・モノローグ

ヴァギナ・モノローグ

とっても感動的で、まんこ素晴らしい!と思う一方で、また「赦す」のか*4、と思うと憂鬱な気分になった。私はまんこについて考えると、どんどん暗い方向にいってしまう。

 そう思っていると、MLで、関西クィア映画祭の追加上映のお知らせが届いた。全米であんなにブームを巻き起こした『ヴァギナ・モノローグ』なのに、日本での翻訳講演の評判はいまいち。*5そこで、独自のフィルムが制作され、今回初公開されるらしい。タイトルはもちろん直訳の「まんこ独り語り」。

●特別追加プログラム「まんこ独り語り」
7/24(火)13:40開場 14:00開演
(プログラム尺:83分)

●上映作品
・『まんこ独り語り(初級編)』
和義名万子/61分/2007/日本/日本語/日本語字幕あり
・『関西クィア映画祭へようこそ!』
関西クィア映画祭実行委員会2007/22分/2007/日本/日本語/日本語字幕あり

●料金
映画祭の半券もしくは前売り券を持っている人は無料
それ以外は1000円

●『まんこ独り語り(初級編)』作品紹介

あなたはまんこをはじめて鏡で覗きこんで見た時、どう思いましたか?びっくりした?可愛かった?エロかった?あなたがまんこを持っていないとしたら、ケツの穴をはじめて鏡で覗きこんで見た時、どう思いましたか?びっくりした?可愛かった?エロかった?子どものころ、まんこについてどう教えられてきましたか?なんて呼んでましたか?まんこは常にエロですか?それとも排泄ですか?それとも手足と同じカラダですか?

あなたは自分のまんこと仲良しですか?

自分のまんこ宛に手紙を書いたことさえある監督が送る、61分、インタビュー形式のドキュメンタリー。抱腹絶倒、なるほど勉強、ここまで来たらむしろ全くエロくない。尽きないまんこトークで、エロくてもいいけど、エロだけじゃ語り尽くせないないまんこの生態を楽しんで知ろう!

(出演)助産師、ここ5年ぐらいはレズビアン、ウルトラまんこを目指す小まんこ、バラのまんこを持つレズ、FTMだったけど辞めました、FTXゲイ、エロリストFTM、MTFまぁまぁ女好き、なにわのおばはん時々おっさん、MTFGID、以上10人のまんこ持ち

全然、私は自分のまんこと仲良しじゃありません。観に行こうと思っています。

詳しくはこちら→http://kansai-qff.org/2007/sakuhin/15manko.html

*1:切らない産婦人科医もいるし、助産院なら比較的切らないところが多いらしい。

*2:マジです。

*3:ここ、生命学の人が集ってるし。生命を学問する?!そもそも生命と向き合うことが恐ろしいです、すいません、みたいな。もはや、被害妄想の域です。

*4:私はここ最近、いくつかのエントリーで「赦し」について書きました。全く別の文脈だったのに、「赦す」という言葉をエンスラーが使っていてびっくりしました。

*5:キャスティングもなあ・・・東ちづるというのは、私のツボではありませんでした。