ブリューゲルとルーベンス

今日が最終日だったので、急いで大阪・中之島にある国立国際美術館の「ベルギー王立美術館展」に行ってきた。すごいお客さんがたくさんいた。大阪の美術ファンってこんなに多いのだろうか。けっこうみんな、しぶい作品を熱心に見ていた。

話題の、ブリューゲル父(?)の「イカロスの墜落」をじっくり見た。
結論から言うと、世評とは裏腹に、たいした絵ではないというのが私の印象だ。もちろん、きれいな色合いだし、不思議な構図で、良い絵に間違いないが、それほど騒ぐほどのものだろうか? もしこの絵に「イカロス」というタイトルが付いていなかったとしたら、右下の脚が誰のものか分からなかっただろうし、評判にもならなかっただろう。要するにこの絵の評判を上げているのは、絵の「タイトル」である。ブリューゲル父子の作品は、もっと別のものを見たい。ベルギーに行くべきか。


展覧会での最大の収穫は、ルーベンスを見れたことである。なかでも、大作「聖ベネディクトゥスの奇跡」は、大傑作である。

ルーベンスの絵は、まったく表面的ではない。何か、ある出来事、というか、ある動きというか、そういうものを必死で捉えようとしている。岡本太郎流に言えば、これは「止まっているのに動いている」絵である。未完成作品らしいが、それがかえってよかったのかもしれない。上部の天使たちの動きの描き方は最高。知恩院の来迎図を彷彿とさせる。(ウェブ上だと色合いがきたなく映るみたいだ)

となりに、ドラクロワによる模写が並べてあって、これも面白い。緻密に写しているが、できばえの差は歴然としている。原作の魂である「動き」がまったくとらえられていない。ドラクロワの模写は、まあ模写だが仕方ないと言えばそれまでだが、非常に表面的な絵である。それに比べて、ルーベンスの原作は、表面に表われていないものを描き切ろうとしている。アートや思想はすべからく後者を目指すべきである。