ベーシック・インカム

昨日、東京と大阪で以下のような行進があったようだ。

不安定生活限界だ フリーターら「生存メーデー」叫ぶ

生きさせろ――。フリーター、日雇い派遣労働者、障害者、ホームレス、生活保護の受給者など、低収入で不安定な生き方を強いられているさまざまな立場の人々が一緒に歩き、踊り、叫んだ。30日に東京で開かれた「自由と生存のメーデー07」。同じ日に大阪でも、その名もずばり「明るいビンボー★メーデー」があった。格差と競争の強まる社会で最も生きづらさを抱える人々が、互いにつながり、声を上げ始めた。

午後3時半すぎ、東京・歌舞伎町。靖国通りが始まるJR線の「大ガード」の下から、大音量のダンス音楽とともにデモ隊が飛び出してきた。DJが乗る先頭車両に続いて、手をふり、足を踏みならしながら進む。

「生活を変えろ」「ホワイトカラーエグゼンプション ただ働き?ふざけるな」。思い思いのプラカードや横断幕が、強烈なリズムに合わせて左右に揺れた。沿道で目を丸くして眺める人たち。

「自由と生存のメーデー07」はフリーター全般労組が呼びかけ、38団体が賛同。若者を中心に、予想を大きく上回る420人が参加した。

デモの後方では、人々から集めた100を超す「デモ・コール」を作家の雨宮処凜(かりん)さんらが叫んだ。「最低賃金1500円以上よこせ」「過労死から逃げろ」「住む場所をよこせ」「生きさせろ」

病気のため今は生活保護を受けるシングルマザー(45)は「『生きさせろ』というメッセージに共感できた。時給800円台でどうやって子どもを育てるのでしょう」。

歌舞伎町では、6メートル×40メートルの巨大なブルーシートを頭上にかぶるパフォーマンスがあった。「正社員、非正社員を問わずプレカリアートが一つの社会勢力としてまとまろうという意味を込めた」と主催者は言う。プレカリアートはイタリア語のプレカリオ(不安定な)から派生した言葉で、「不安定な雇用を強いられた人々」の意味だ。

大阪の「明るいビンボー★メーデー」は、大阪市東住吉区長居公園が会場。フリーターや野宿者約100人が集まった。プラカードには「時給2000円。有給休暇を」の文字が躍る。

派遣として大学図書館を転々としてきた女性(29)の手取りは月約10万円。来春で3年契約が切れる。「自分はダメ人間だと感じてきた。同じような境遇の若者がいっぱいおり、しんどいと声をあげる勇気が持てた」

別の公園で暮らす50代の男性によると、最近「泊めてほしい」と駆け込んでくる若者が後をたたない。「野宿とそうでない暮らしの距離が近くなっているのを感じる」

人が生存というただ一つの根拠をもとにして要求し得る「ベーシック・インカム(BI)」という構想がある。これをめぐっては、さまざまな意見もある。もっとも大きな批判の二つは、労働インセンティブ(BIを実行したら、労働意欲を失う)の問題と、実行可能性(そんなものは無理)の問題であろう。私は、もう少し違う立場から実はBIには批判的*1なのだが、それでもとにかくまずはやってみたらいいとは思っている。もう、思想から政策へ移すべき時期であると考えている。「食うに困らない」というのは、生存のための最低限の要求であるはずだ*2

ウェブで読めるBI関連サイト(日本語)
「格差社会とベーシック・インカム」(小沢修司さん)

関連書

福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平

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自由と保障―ベーシック・インカム論争

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Real Freedom for All: What (If Anything) Can Justify Capitalism? (Oxford Political Theory)

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*1:たとえばBIが8万円/月として、明らかにそれでは生存するのに足りない人がいる。だから私は生活保護の延長で考えたほうがよいように思っている。

*2:もっと要求してよい、とは思っているが。