進化論の挑戦

進化論の挑戦 (角川ソフィア文庫)

進化論の挑戦 (角川ソフィア文庫)

 伝統的なキリスト教信仰に基づく世界観・人間観に、ダーウィンの進化論がいかなる影響を与えたのか。疑問に思う論点がいろいろあり、関連文献を少しづつ集めている。

 その途上で、佐倉統さんの著書に出会うことになった。本書は大学の講義がベースになっているそうで、著者の知的興奮が、文章の行間から溢れてくる。文体や例示など、非専門家の読者向けに工夫が凝らされており、かなり面白く読めた(電車の中で読んでいたら、二駅ほど乗り越す)。初版は1997年で、2003年に文庫化。

 本書の特徴は、ダーウィン自身が唱えた進化論の解説は最小限にとどめ、遺伝学や動物行動学などの知見を取り入れて、いまも研究が進展しつつある進化生物学が、伝統的な人文・社会科学に与えた思想的インパクトについて、多くの頁が割かれているところにある。

 もっぱら人文系パラダイムの内部で教育を受けてきた私は、自分なりに考えなければいけない宿題を沢山頂いた感じがする。佐倉さんは、新書でも進化論について書かれている。そちらも読んでみたい。